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「じゃ、またね」
「うん」
会社の前で別れを告げる高良に小さく頷き、見送られながらビルの中へと入る。
「こーとね。おはよー」
背後からかけられた声に振り向くと、ベージュ色のショルダーバッグを斜めがけした高良の後ろ姿が目に入った。
「おはよ、桃香」
私と同じ方向に視線を向けるその人に挨拶を返し、隣に並ぶのを待つ。
「弟クン、相変わらずカッコイイね」
「でしょ。よく言われる」
うっとりする彼女の言葉に笑って返し、ポケットから出した飴を貰った。
「琴音が彼氏できない理由って彼だもんね。でも、分かるわー。あんなのが側にいたらそりゃできないよ。王子だもん」
口の中の飴を噛み砕きながら喋る桃香は私の同期で同僚。
彼女が喋る度に、濃厚なミルクがふわりと香った。
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