透明だってさ

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 わざわざ自分から言うことではないと口にしていなかったが、流れで言ってしまうことはよくある。俺は顔をしかめて「透明でも格好良くない」と断言した。 「ええー、そうか? 超能力みたいじゃん」 「まあ、テレビで特集される透明ヒーローみたいなのもいるしな」 「確かにそういうヒーローっぽい人もいるけど、父さんはそういうのじゃないから」  順一の言葉に頷いた。そんな人物なら、自分の父だと自慢して話したくなるだろう。  透明なことを活かして、正義の味方といえる働きをする人ならきっと尊敬していた。テレビに出演して、活躍する人だって格好良い。透明であることを長所とし、堂々とその力を使う様子は、特殊能力などない自分たちにとっては羨ましいものだ。 「あー、確かに普通の人っぽいもんな。でも、俺はかずの父親いいと思う。なんか、こうあまりにもテレビとか雑誌特集されている人って、ヒーローだろうけど苦手だ」  順一の言葉に「なんでだよ! 格好良いじゃん!」と反論する声を聞きながら、俺は相槌を打つ。父と格好良いヒーローが同じ透明能力を持っていることが不思議だ。  ヒーローのイメージをそれぞれ語り合っていれば、休み時間はあっさりと潰れてしまう。こんな馬鹿みたいな話をする時間はあっという間に過ぎていくから、授業時間が無駄に長く感じてしまう。
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