透明だってさ

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「……あ、そういえば父さんってあの時、裸だったの?」  犯人が子供を手放した時、父はいなかった。いくら透明人間でも、服装までは透明にならない。けれど、服はあの場に見えなかった。 「裸なわけあるか。いいか、その勘違いはやめてくれ。これからも発表することはないが、特殊な服があるんだ」 「へえ、そうなんだ」  誤魔化そうとしているようには見えなかった。それが本当か確かめるつもりはないし、余計なことを耳にしすぎるとよくない気がして流すことにした。 「と、それより体調はどうだ? 気持ち悪くないか?」 「? 別に平気だけど」 「そうか。体調がおかしくなっていないか、心配でガタガタ震え続ける必要はもうないな。いやあ、お前にも父さんの遺伝子が引き継がれてるんだな」 「そりゃ、父さんの子だし。え、違うとかそんなことないよね?」  今日はただでさえ、事件に巻き込まれてバタバタして疲れたのだ。驚きなんて求めていない。俺の疑問に、手をぶんぶん振った父は「そうじゃなくて」と一つ前置きをする。 「お前、ちょっと透明になっているから」 「え?」 「本当なら、できるだけ穏便にすませる予定だった。けど、犯人がお前を疑って襲いかかったからな」 「……は?」 「やっぱり父さんの血だよな。危機的状況だから、透明になったのか。混乱してショートしそうだからなったのか。理由はわからないが……まあ、しばらくしたら戻るだろ」  犯人が俺を疑った理由。襲いかかった原因がわかったけれど、耳を疑う出来事だ。自覚なんてなかったし、ちっとも気付いていなかった。
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