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「あ、おかえり」
にこりと微笑む姉は大きなお腹を抱えて、私を出迎えた。
「…お姉ちゃん、来てたんだ」
「うん、近くで用事あってね」
私は鍵を閉めると、姉の体を支えながら居間に入った。
居間にはいつも居る母はおらず、代わりのようにベビー服や読みかけの雑誌が置いてあった。
「お母さん、少し遅くなるらしいよ」
姉は食べかけのクッキーをかじりながら私に告げた。
「そうなんだ」
「クッキー食べる?」
はい、と姉は個装された四角いクッキーを渡してきた。
「え、ありがと」
クッキーを受け取ると私は自室に向かうため居間を出た。
居間を出て、すぐ前にある階段を登るとマリと名前の書いてあるプレートのドアを開けた。
朝、床に散乱させた教科書を片付ける気分にもならず私は制服のままベッドに倒れ込んだ。
タチバナにどんな顔をして会えばいいか全く想像出来ない。
私を好きだと面と向かって言ってくれたのは嬉しかった。
目を瞑るとタチバナの顔が脳裏に浮かんできて、私は何とも言えない気持ちに押し潰されていた。
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