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「やっと返事が聞けるんだな」
彼がそう私に囁いた。
彼は知っているんだ、私じゃない私を。
「もう俺、30過ぎちゃったんだけど…はは」
苦笑する彼の口角には皺が見えた。
もうそんなにも年が経っていたんだ。
「待たせて、ごめんね」
「待ちくたびれたんだけど」
お互い顔を見合わせて、ふふふっと笑い合う。
「あの時以来だね」
「…そうだったな」
彼は目を逸らし空を見る。その行動が私には、すごくもどかしい気持ちになった、やっぱり知っていたんだ。
「好きだよ、ずっと好きだよ…」
手のひらで彼の濡れた頬に触れたのは2度目だった。
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