掲示板の書き込み

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 訃報 H市N町のMさん。×月〇日。刺殺。享年三十二歳。  名前。年齢。住んでる地域も何もかも、そのまんま自分だった。  俺が死んでるって? 何の冗談だ? バカらしすぎて逆に笑えない。  だって、この通り俺は生きている。訃報なんて書き込まれる理由がない。それとも、ごく近い地域に同姓同名年齢まで同じ人間がいるのだろうか。亡くなったのはその人だろうか。  だとしたらお悔やみ申し上げますっといつた気分だが、少なくとも、俺じゃないことだけは確定している。繰り返しになるけれど、俺は生きているのだから。  冗談にしても、本当に悪趣味だと、スマホの電源を落としかけた時、気づいた。  訃報の日づけは×月〇日…さっき明日から今日になったばかりの日づけだ。  まだあと二十四時間近くある今日という日。その日にこの、H市N町のMさん三十二歳は死ぬ。しかも死因は刺殺…誰かに刺されてだ。  …明日は念のため、風邪でも引いたことにして仕事を休もう。一日家に閉じこもっていよう。  そう思いながら、もう一つ考えた別のこと。申し訳ないけれど、とんどもなく自己中なその意見は。  近所に、同姓同名同年齢のMさんが存在していますように。この訃報は、俺ではなく、その人のことでありますように。 掲示板の書き込み…完
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加