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訃報 H市N町のMさん。×月〇日。刺殺。享年三十二歳。
名前。年齢。住んでる地域も何もかも、そのまんま自分だった。
俺が死んでるって? 何の冗談だ? バカらしすぎて逆に笑えない。
だって、この通り俺は生きている。訃報なんて書き込まれる理由がない。それとも、ごく近い地域に同姓同名年齢まで同じ人間がいるのだろうか。亡くなったのはその人だろうか。
だとしたらお悔やみ申し上げますっといつた気分だが、少なくとも、俺じゃないことだけは確定している。繰り返しになるけれど、俺は生きているのだから。
冗談にしても、本当に悪趣味だと、スマホの電源を落としかけた時、気づいた。
訃報の日づけは×月〇日…さっき明日から今日になったばかりの日づけだ。
まだあと二十四時間近くある今日という日。その日にこの、H市N町のMさん三十二歳は死ぬ。しかも死因は刺殺…誰かに刺されてだ。
…明日は念のため、風邪でも引いたことにして仕事を休もう。一日家に閉じこもっていよう。
そう思いながら、もう一つ考えた別のこと。申し訳ないけれど、とんどもなく自己中なその意見は。
近所に、同姓同名同年齢のMさんが存在していますように。この訃報は、俺ではなく、その人のことでありますように。
掲示板の書き込み…完
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