1章

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 彼女と折り重なるように一つの寝袋に入る。チャックを閉めると、彼女の吐息と自分の呼吸をする音が暗闇に充満した。何も感じまいとしていたが、こんな狭い所で女の子と密着していると、生々しい感触が伝わってくる。こんな状況に遭うのは、何も今じゃなくても良かったよな。俺が意識していることを、彼女は感付いているだろうか。そういや、舞子、どんな顔していたっけ。もう二度と見られない。その事実が、無性に彼女の顔を見たくさせた。 「ねえ、もう一回外に出ても良い」 「いいけど、なんで」 「いいから」  そう言うが早いが、チャックを開け、体を上げる。開けた瞬間、さっきよりさらに気温が上がっているのがすぐに分かった。むわあっとした空気が顔にへばりつき、忘れていた汗が滲み出す。窓から差し込む灼熱光で舞子の顔が浮かび上がる。そうかこんな顔をしていたか。手を伸ばして、頬に触ってみる。女の子の肌なんて、触ったのは初めてで、こんなにも柔らかいだなんて思いもしなかった。次に鼻。目を触ろうとしたら、自然につむってくれた。指を左右に動かすと、眼球もそれに合わせて動く感触がした。きれいな球体だ。そんなことをしている間も、警告音は鳴り続け、気温は上がり続ける。流石に、そろそろ意識が遠のきそうだった。 「ごめん、最後にお前の顔が見たくなった、でももう暑いから寝袋戻ろう」
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