【1.探究心は終わらない】

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 このマンションから徒歩五分の駅で鈍行に乗れば、十分たらずで赴くことが出来る。リビングに掛けた時計を確認し、短針が九を指しているのを見て口の端を吊り上げた。次の電車に乗るのに丁度良い頃合だ。  電車の中はがらんとして、人もまばらだった。時間帯と路線を思えば当然と言えば当然かと降車口付近に腰掛け、目的の駅に着くまで先の暗号を思い出していた。  暗号解読の過程であぶりだされたのはカタカナ英語複数と、それに対応するのであろうアルファベット数個。そして現在の目的地名、オフィスビル・セントラルプロ。あの暗号が書かれたコピー用紙は、ここの関係者が置いていったものなのだろうかとあれこれ思案しつつ、そのほかのカタカナ英語の関連性に疑問を覚える。  そういえば、携帯と財布だけでここまで来てしまった。はたしてこのまま入ってもいいのだろうかと思いはしたが、人通りの少なくなったセントラルプロの前でひとり立ち止まっていては不審者である。灯りが弱く少々暗めな中にお邪魔してエレベーターの案内に目を通し、どの階に行くべきかを考える。  ……人のいなさそうな屋上から下へ見回ってみるか。
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