【1.探究心は終わらない】

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 もう帰ろうかな、と踵を返しかけたところで、裏側から話し声が聞こえてきた。風向きが変わったことでこちらへ音が流れてきたのだろう。誰かいるな、と何の気なしに近付いていく。屋上の裏側はフェンスが低く、一部張替えのためか取り外されているようだ。だが、取り外された跡がうっすらとしか残っていないことを考えると、張替え工事は中断されたまま二~三ヶ月保留になっているらしい。これは管理側の怠慢だな、と、フェンスの無い低いコンクリートに触れながら足を進める。  そのような些事に気を取られていたことがまずかった。ほんの数メートル先で会話をしていた二人のうちひとりが突然こちらへ襲い掛かってきたのだ。殴りかかってきた程度ならまだ対処のしようもあったが、相手は明らかに急場の武器ではないサバイバルナイフを所持していたのである。長物ではないため距離を詰めるわけにも、無論素手で受けるわけにもいかず、慌てて後退して……凸型のコンクリートに躓いて転んだ先は、地面が無かった。
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