ガラスの悪意

第二章 悪意

　で、警察に突き出された犯人が自供したところによれば、二股コンセントに見せかけたスピーカーには、ある種のメッセージが流れていたらしい。

　それが《お経》に聞こえていたのだ。

　スピーカーは、もともと大学で心理学の実験用に開発されたという。

　心理学のゼミで一瞬だけ印象的な画像を見せたり、音声を聞かせて、深層心理にメッセージを植え付けるというサブリミナル効果に似た実験で、催眠術のテクニックをどこまで簡略化すれば人の意識が操れなくなるか研究していたのだ。