第1章

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雪降る街並みを駆け抜ける。 運動とは縁のない生活をしていた為、規格以上の稼働率に身体が悲鳴を上げる。今僕はとても切羽詰まったような顔で今にも転びそうな様子で走っているのだろう。周りは気に出来ない。それ以上に急がなければならない理由が僕にはあった。 「今日、あの景色の前で待ってる。」 用件だけ書いてあるこの手紙を見たのはついさっき。聞けば昼からあったらしい。数時間前の自分を殴り倒したい。 通りを駆け公園を抜け、辿りついたその場所は、初めて出会った場所であり結ばれた場所でもある。しかし其処に人影はない。 間に合わなかったか…マイナスの感情が胸に伸し掛かる中、僕は聞き逃さなかった。その小さな息遣いを。三歩進んで階段を覗けば、その小さな背中が此方を向いた。 「…ごめん……待たせて。」 「遅かったね、でもありがとう…来てくれて」 今にも凍えそうなその手に、僕は自分の手を重ねた。
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