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キルコがそう言うと、サリの目つきが険しくなった。
「もしかして、あいつらが……?」
“あいつら”とサリは、偽国の残党のことをそう呼んだ。次いで何か申し訳なさそうな表情に顔を染める。
キルコは頷くと、
「井岡と、多分ヒズミを殺したやつにね」
口の端をきゅっと結んだ。
サリは片目をぴくりと震わせると重そうな唇を開いた。
「本当、ごめん。うちがあの時あいつを通してなければ、井岡には逃げられずに済んだのに……」
いや、それは。と、傍の壮介は心の中で否定を唱える。
魔導具で変装していた井岡を止める道理など、あの時のサリには全く無かった。受付嬢に非は全く無いはずだった。
しかしそれを口に出さなかったのは、壮介には分かってしまっていたからだった。
自分に非が無くとも。ほんのひとかけらの可能性であっても、それを見逃してしまったことへの重責からは逃れようが無いということを。
井岡の脱走からたびたび、密かに見ている夢を壮介は思い出す。
だからこそ、壮介は何を口を出すことができなかった。
しかし死神は別なようで。
「サリは悪くないよ。誰も悪くない。大丈夫、私が全部ぶっ飛ばして解決するから」
実に、頼もしく。そう言い放ってみせた。
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