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夢の中、ヒズミとの自問自答。
ヒズミがキルコに語り掛ける。
「私のかたき討ちは難航しそうね~?」
視界の端に誰かが座っているのが見えた。
本を読んでいるその姿は、蓮田壮介のものであった。それだけでキルコは精神が安定したのを感じた。
ヒズミの問いに首を横に振って答える。
「そんなことないよ。大丈夫」
大丈夫、と自分に言い聞かせ。それにヒズミは、まるで分かっていたかのように頷いて応えた。
「井岡に死神道具を仕掛けておいたんだ。電気野郎に邪魔される前にね」
死神道具、働き女王蟻。追跡装置でその周囲の魔導まで感知してくれる優れものだ。
「これで井岡の居場所が分かるはずだよ。そうすれば偽国の残党だって芋づる、私が全部ぶっ飛ばせるから」
かたきは取るよ、と。キルコは自分に言い聞かせる。
全部ぶっ飛ばす、と。キルコは自分に言い聞かせる。
大丈夫、と。キルコは頷いた。
「それよりもだよ」
――――引っかかるんだ。
――――あれは完璧に当たると思ってたのに。
――――でも、避けられた。
――――動きが完全に読み切られていた。
「あの内通者はキルコを知ってる人かも~」
ああ、だからか。と、キルコはここにきて納得をした。
「だからここなんだね。……やっぱりそうかぁ」
窓の外は薄く少し暗い青色が広がっていた。
夜明けも近づいたようだった。
「じゃあね、キルコ~。頑張って~」
薄く遠のく図書館の中で、ヒズミはにこりと笑った。
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