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見るからに萎えている様子のユジロー。彼の言う『簡単な死神道具』は、どうやらそう簡単には見つからないらしい。裏を返せばこの蓄魔筒が必要な場というものが無い、というわけで……。
「あの、これってもしかして、さっき言ってたプログラムなんちゃらが無いと使えな――」
「言わないでくれ……!!」
見るからに不覚、といった様子のユジロー。どうして作っている途中で気づかなかったのだろうか。
そんな自分の間抜けさを否定するように彼は声を絞り出す。
「大丈夫、大丈夫なはず……! たぶん、うん、大丈夫……」
何だか壮介にはユジローの姿が哀れに見えてきた、その時、壮介に妙案。
「そうだ、魔力が大量に必要な道具とかあるんじゃないですか? それを使う時には重宝するかも」
さながら天の助け、自分で言うのも何だが壮介は良いアイディアを出せた。と、そう思ったが。
「…………いや、この蓄魔筒が保有できる魔力量はそんなに大したことが無いんだよ。それにこれを複数連結した際に、適用道具内における魔力回路の断線と魔力摩擦による蓄魔筒自体の損傷が確認されてるんだ」
ここからさらに蓄魔筒の欠陥的特徴をユジローは床に向かってこぼし続ける。
魔力筒の原理上サイズは魔力量に影響しない、ということ。蓄魔筒からの魔力出力を調整できない、ということ。摩擦を起こす原因の連結不和を解消するためには通魔性90%を超える金属が必要だがそんな物は存在しない、ということ。エトセトラ、エトセトラ。
さすがにこれを遮る気になれなかった壮介は、どう慰めるかを考えながらそれを聞いた。
続くこと10分以上。専門的になりすぎて何を言っているのか全く理解できなくなった頃、カランカランという音がこの悲しい空間にストップをかけた。
落ち着いた入店音に続いて声。
「ユジローさん、いらっしゃいませんか?」
どうやら客が来たようで、ユジローはのろりと動いた。
「……接客しなきゃ」
そう呟くと、ユジローは猫の手を装着した。
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