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そして。そのたびにしていた決意を、今ここでも固く見直す。
――――いつか、ちゃんと本当のことを言おう。
そして謝ろう、と。キルコは誓って、ぼんやりとした神社の風景を眺める目に意識を移した。
それと同時に、
「……キルコ?」
自分に呼びかける声に意識を向けた。
黒い修道服に金髪が映える。ジェーンであった。
恐らく、カガクラの作戦伝達を聞かないでボーっとしているキルコを注意するために近づいたのだろう。
キルコのその予想はどんぴしゃり。
「最後の重要な話よ。ちゃんと聞かないと」
ジェーンは指を振りながらキルコを窘めるが、黒い死神は自分より高い位置にある青い目にじっとりとした視線を送った。
「私たちのすることはリジィの確保でしょ? 基本的な作戦はもう聞いてるし、これ以上聞くべきことは無いんじゃないかな」
作戦における立ち回りなども元より学校で叩き込まれている。必要なのは班単位での作戦確認だけである。キルコの場合は、カガクラとジェーン。
ジェーンは何か言い返したいようではあったが、それでも少し納得してしまったようで。鼻で軽いため息をついた。
「わかったわよ。それで、さっきはぼんやりしてたけど何を考えてたの?」
そう訊かれて、キルコは思わず動揺をした。考えていたことは、様々思うところのある廃墟、そして蓮田壮介のこと。どちらにせよ、彼女は話したいとは思わなかった。
「…………」
なのでキルコは、ほんの少しだけ眉を困らせ考えると。
「いやさ、この入り口って何だか変だなって」
本心を隠してそう言った。
本心を隠した、というのは少し違う。実際に、キルコが思っていたことでもあるからだ。
神社とは神道に属するものだ。そして神道の死生観は、地獄の存在を許容できない。
「私たちだけが知ってることだけど、この世界の仕組みは輪廻転生が一番近いんでしょ? どうせならお寺に入り口を作ればよかったのに。神仏習合で鳥居のあるお寺なんてたくさんあるだろうし」
キルコが一気にそう言うと、ジェーンは意外そうに彼女を見た。
「キルコ、ちゃんとそういうこと知ってるのね。びっくりだわ」
本当に驚いた様子のジェーンに、キルコは頬を膨らませる。
「失礼な。一般常識くらい身につけてるよ」
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