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そう言うキルコを見て、ごめんごめんとジェーンは笑って謝る。そして、続ける。
「ここに入り口を作った人も、キルコみたいに宗教の知識を持ってたのかもしれないわよ?」
ジェーンの言っていることが何を意味するのか、キルコにはすぐに理解できず「ん?」と首を傾げる。それを相槌ととったジェーンはさらに先へ。
「神仏習合のことよ。合わさってるなら神社でもいいや、ってその人は思っちゃったのかもってこと」
そこまで聞いて、キルコは「ああ、なるほど」と頷いた。
「あー、まあ、たしかにそうかも……?」
とりあえずはそれで納得をば、とキルコとジェーンは神社へと目をやる。その目にはただ荒れた光景が映るだけであった。
少しの間を置いて、ジェーンがキルコへ言葉をかける。
「今みたいに見方を変えることも大事なことよ、キルコ。物事にはいろんな側面があるもの」
突然にそう言われたキルコはきょとん、と。左の目を丸くすることでそれに応えた。
「蓮田君を危ないことに巻き込んじゃった、って考えるんじゃなくて、キルコなりの違う見方をしてみた方がいいと思うわ」
ぼんっ、と。キルコは目を見開き、心臓を跳ねさせた。
「なんで分かったの」
壮介について考えていたことをどうやって見破ったのか、と。キルコは友人に問いかけながら、彼女のするであろう回答が思い浮かんでいた。
ジェーンはこめかみと叩いて青い眼を笑わせる。何かが可笑しいかのように。
「私の眼は特別……だし、そんなの無くてもキルコはウソ隠すの下手なんだからすぐ分かるわよ。あなたの考えることなんて蓮田君のことばっかりだろうし」
意外なことを言われ、キルコは自分が妙な恥ずかしさを感じていることに気づいた。少しだけ体が熱くなる。
「う、うるさいなー。それだけ私は純粋ってことだよ。いいことだね」
「そうね」と流すように笑うシスターには敵いそうもない。キルコは軽いため息をつくと、友人としてアドバイスをくれたジェーンへと一言。
「ありがとね。ジェーンの言う通り、ちょっと見方を変えてみるよ」
それをジェーンは頷きながら笑顔で受けた。
それと同時に。
「では作戦開始まで各班で息を整えておいてね」
カガクラが作戦伝達を終えたようだ。
作戦開始時刻まで、残りは一時間を切った。
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