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キルコ達死神が重要な作戦の結構時刻を待っているその時、地獄にいる壮介は目を丸くしていた。
三途堂への新たな客人は、長い黒髪が美しい女性であった。薄暗い店内のロウソクの光を浴びて、艶やかに揺らいでいる。
接客のために肩を落としながら歩くユジローについて行った壮介は、彼女を見ると思わず「おお」と声を漏らしてしまっていた。自分の声を自分の耳で聞いて、初めて自分が反射的に声を出してしまったことに気づいた壮介であったが、そんなことは些細なことであった。
と、言うのも。
「ミ、ミツカサン!? ヨウコソイラッシャイマセ!」
壮介の隣に、感嘆の言葉以上の分かりやすい反応を見せる男がいたからだ。
瞬間的速度で気分のゲージが落胆から興奮まで上がりきったラクイ・ユジローは、もはや先ほどまでの蓄魔筒の話など忘れてしまっているのでは、とすら思えるほどの様子をこれでもかと見せている。
そんなユジローの姿を見て、ミツカと呼ばれた女性は少し垂れ目気味のおとなしそうな表情でくすりと笑わせた。彼女は声までおとなしそうな雰囲気であった。
「こんにちは、ユジローさん。うん、今日も良いファッションですね」
「あ、ああ、いえいえ、そちらこそ」
何気ない挨拶ではあるが、壮介はそれを聞いて耳を疑う。ユジローという違和感の塊を見て、素敵な格好とはいったいどういうことなのか。
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