捕獲作戦

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 聞いていると、美束の口からは地獄初心者である壮介の興味をそそるようなワードが頻出し、ユジローはそれに小難しい専門用語のような言葉で答える。  「イギリスで作られた違法装置を密輸してそれを元に瘴気の保存道具を作ってる奴らがいるって報告があったんだけど、それって技術的には可能なことなんです?」  「ふむ、簡単なことだと思いますよ。魔力や魔導とは違って、瘴気の扱いは比較的簡単ですしねぇ。ただなぁ、そんな物を作って何をしてるのかが不思議ですねぇ」  「私たちの見解だと、魔導生物の違法研究と飼育をしてる組織に売り飛ばしてるんじゃないか、ってことになってますよ。だから、この事案は慎重に調査して芋づる式に検挙させたいって」  と、こんな会話が続き。壮介あくまで傍観に、と心がけてはいたが、しかしやはり反応してしまうものはしょうがなかった。  「魔導生物…………」  思わず、本当に思わず。壮介がぼそりと呟いてしまった言葉をユジローは逃しはしなかった。  「はっはは、やはり気になるかい? 蓮田クン」  思ってた通り、とでも言うかのようにユジローは笑った。それにつられて美束も頷く。  「壮介くんは飛び入りですもんね。色々新鮮なことがあって楽しいでしょう?」  そう言われて、壮介は否定できなかった。正直に頷いてしまう。  「あはは、そうですよね」  その様子に美束は笑い、そして続ける。  「魔導生物っていうのは違法研究取締班が対策しなきゃいけない魔導研究の一つです。生き物の魂と肉体を元に、魔導で改造を加える禁忌のことなんですよ」  ある意味魔導の中で一番おぞましい、と美束は言う。その後をユジローが引き継ぐ。  「で、さっき僕たちが話してたのは、その魔導生物の餌についてだよ。魔導生物の本質はもはや肉体ではなくその改造された魂になってしまうんだ。だから餌になるのが”瘴気”って言って、生物の死体から漂う浮動的なエネルギー体なんだよねぇ」  それを聞いて、壮介は「ふむふむ」と首を縦に動かした。  「その瘴気を保存する魔導具について話してた、ってことですか」  なるほど、と頷く昼前。時刻は11時半に至ろうとしていた。
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