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どこもかしこも壊れている。足元には剥がれたレンガと崩れた瓦礫。崩壊した建築物に沿って生えるツタもあればレンガ道からは伸び放題の雑草が顔をのぞかせている。
崩壊という負のイメージとは裏腹に、廃墟は何か神秘的な感覚を抱いているように、キルコには見えてしまった。
幼い頃の自分がそこにいたという事実、両親が死んだ場所という嗚咽、死神として世にのさばる悪党を捕らえるという使命。それらすべてが混ざった故の神秘なのかもしれない。
人は、自身では処理しきれない様々な感情の奔流を神秘と呼ぶのかもしれない、と。キルコはそう思った。
そんなキルコの隣で、ジェーンがカガクラの持つ道具を覗き込んで言う。
「奴らは部屋から動かないですね。何か儀式でもしてるのかも」
現在、作戦開始から約10分。キルコ達、リジィ対策班は廃墟で構成された路地に身を潜めていた。“働き女王蟻”で偽国の残党の動きを確認するジェーンは眉をひそめる。
それを聞いてカガクラも同様に顔をしかめたが、しかしすぐにそれを緩めてキルコとジェーンへ言う。
「魔導の儀式をしているならば、その内容は良いものではないだろうね。しかし、逆に今を狙えばリジィを仕留めるのは簡単かもしれない」
と、その言葉を聞いたキルコは数ミリ首を傾げて問う。
「リジィは捕獲するんじゃなかったの?」
ジェーンも同じように疑問を持ったらしく、カガクラの言葉を仰ぐ。
カガクラは逆立たせた髪を横に振って、答える。
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