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「上にはそう言われたけどね、リジィの魔導には未だ謎も多い。上層部の強欲さに従って仲間を危険に晒すわけにもいかないだろう? 今日こそリジィを討つんだ」
そういうカガクラの言葉からは上層部への明らかな侮蔑が読み取れた。前線に出ないでただ座っている重鎮たちは、とにかく知りたがりらしいということはキルコも分かっている。リジィの魔導を知りたがっている故の命令だったのだろうが、カガクラはそんな上層部の掌に収まるような器ではないようだ。
「ま、その通りだよね。あいつムカつくし」
キルコは上司であり師である彼の意向を全面的に支えることを了解し、ジェーンも次いで頷いた。
それを見て、カガクラは穏やかに笑うと少し寂しそうな表情を見せた。何を想っているのか、キルコには想像は難くなかった。
しかし、ここは敵地。カガクラはすぐに表情を変えて固めて、ジェーンに向いた。
「じゃあ作戦に戻ろう。……あいつらの動向についてだけど、ジェーンちゃん、君の眼は何か危険を感じているかい?」
青い青い深い眼を視線で指すと、カガクラは問うた。しかし、答えはすぐに否定で返された。
「危険だけなら一か所にずっと固まっています。キルコの道具の示す部屋に……ずっと。具体的なことは直接視ないと……、すみません」
ジェーンは申し訳なさそうにそう言うと、不思議な目を閉じて頭を下げた。
「いいさいいさ、大丈夫。引き続き、比較的安全な道を探って先達をお願いするよ」
申し訳なさそうにするジェーンを軽く許すと、カガクラは息を大きく吸い込んだ。
「よし、移動再開だ」
カガクラは立ち上がり、二人の女性執行官もそれに倣う。
「………………」
キルコは立ち上がりながら、同時に頭の片隅で眉をしかめた自分が立ち上がるのを感じていた。
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