捕獲作戦

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―――――――――――――――――――――  廃墟と化した街を進み、何の脅威も感じぬままリジィ対策班の三人はそこに立っていた。  廃れた洋館。崩壊した街で、一番と言えるほど被害の少ない建築物。それはところどころの破損に留まっていた。  地獄協会中央議館。  現在であるところの地獄協会にも在る建物である。”働き女王蟻”の反応はこの洋館から出ていた。  「ジェーン、どこだかわかる?」  中央議館を前に、崩れた飲食店に身を隠したキルコはシスターへと小声で訊いた。  「……魔導が集中してるのは、……あそこね」  ジェーンは、辛うじて残っている窓から洋館の一か所を指さして言う。  「二階。一番端の狭い部屋」  青い眼を見開いて、彼女は息をついた。  ついに、この時がやって来た。時刻は11時25分を差そうとしている。ついに、敵の胃袋へと潜入する時間だ。  カガクラがジェスチャーで『少し待て』と二人に伝える。そして、手には通信機。  「敵の潜伏箇所を発見。元地獄協会中央議館だ。これより、潜入を開始する。リジィ対処報告パターンは赤赤白。……精神を強く持ってくれ」  キルコ達ではなく、待機している後発班へ。カガクラは、リジィに対処したことを知らせる発光パターンを念のため寸前で通達し、最後は部下の心に命運を託した。  通信道具への魔力を切ると、彼はこくりと頷いた。キルコとジェーンも見逃すことなく、それに同調。  三人は同時に身体を動かした。  現在、昼。議館の中は、薄暗い。それは窓に打ち付けられた板のせいであった。  キルコはそんな薄く伸びた闇を感じながら、動悸を押さえた。  守る使命、両親の仇、友人の仇、逸る心拍音。  キルコは小刻みに揺れる視界の端で、仲間を見る。カガクラ、そしてジェーン。彼らも同じはずだ。溢れようとする感情は違えど、その心臓は動きを加速させているはず。  しかし。  と、キルコは固く歯を結んだ。  これも同じはずだ。即ち、鼓動を抑えなければいけない、という覚悟。  今三人は……否、この廃墟の内外に待機している仲間たち全員は死神として立っている。それはとてつもない重圧であり、そして勇気であった。  視界はクリア、呼吸もスムーズ。胸の心臓は、もう静まっていた。  カガクラのジェスチャーを目が捕らえる。
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