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「――――魔導が膨張して、ッ!! 二人とも危ない――――!!」
ジェーン・ドゥの危険を感じた声が響き、同時に見えない力で引かれたように扉が勢いよく開いた。
部屋の中の光景が、一瞬の刻まれた時の中でキルコの暗い目に焼き付いた。
薄暗いロウソクの火。中央には椅子。座っているのは井岡健。そしてその周りには、六つの黒い箱。
静止はしていなかった。微動し、その身を膨らませていた。まるで、破裂しそうな程に。
一瞬の時が過ぎ、次の一瞬が訪れた。
破裂。
そして、爆散する魔導の波。
言葉にするなら黒い風と言えるようなどす黒いエネルギーがキルコのスローな視界で広がり始めた。
頭の回路が焼ききれそうな程に、高速で思考が巡る。
(これは、まずい)
と。キルコは余分に危険を考察する。
(これを防ぐのは、難しい)
例え”グベリア教会の魔祓いガラス”を使ったとしても、
(あれは全本位には対応できないし)
目の前の魔導の波は空間を伝って、確実にキルコ達を殺しに来る。
即ち、目の前には死が広がっていたのだ。
…………。………………。
――――しかし、キルコの目は死んではいなかった。それはこの場にいる他の二人にも言えることであり。
キルコの思考回路はさらに加速をし、おそらくはジェーンも辿りついていた。カガクラの刹那の言葉をこぼさず聞き取り、それを実行に移していた。
やろうとしていたことと何ら変わらない。
「――――全部ッ、捕獲だッ!!」
カガクラが叫ぶと同時に、キルコとジェーンは腕を突き出していた。
禁庫開錠。死神道具、ランダンガ湖の監禁鎖。
全てが瞬間の出来事。
太い漆黒の鎖が部屋に張り巡った。天井から床へ、壁から壁へ、壁から床へ、天井から壁へ。縦横無尽に鎖が部屋を蹂躙し、魔導をその空間に縛り付けていた。
黒い魔導の破片がキルコの鼻先で、その動きを止めた。
「………………」
「………………」
「………………」
三人の集中が重なり、再び静寂が訪れた。
禁庫と呼ばれる許可が無ければ使用できない道具庫。そこに保管されている道具。非常に大量の魔力を必要とし、精密なコントロールも要求されている。
そんな緊張の中で、カガクラが口を開いた。
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