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そう呟いて、ジェーンはハッと部屋の中央を見た。キルコも同時に直視。そこには、井岡がいたはずであった。
果たしてそこには、居た。椅子に座った井岡健が。
というより、気を失っているようであった。うねった茶髪の持ち主は、力が抜けたように椅子にただ乗っかっている。
「…………井岡健の確保は成功したっぽいが、見事にしてやられたね」
苦言を口にしたのはカガクラ。部屋の中を慎重に進み、井岡へ拘束具をあてがった。キルコも「たしかに」と頷く。
「あれはリジィの箱だったね。あんな能力まで持ってたなんてびっくりだよ」
ジェーンも部屋に入ると、顔をしかめて見せた。
「でも分からないですね。確かに井岡は魔導の素質があったようですけど、こんな餌にするだけの為に脱獄させられたんでしょうか?」
言われてみれば、とキルコは考える。
「こっちはぞろぞろとこんなとこまで遠出させられて、嫌がらせされたみたいな気分、……だ、よ……?」
何か重大なことに気がついたような、そんな気がして。カガクラやジェーンは「ん?」とキルコの顔を覗き込んだ。
ぞろぞろと。死神が、ぞろぞろと。地獄における実行部隊が、ぞろぞろ、と。地獄から離れてしまった。
と、いうことは。
「もしかして……!!」
キルコの脳内に一つの考えが迸っていた。
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