欺記

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 某所。時刻は11時半。   「私の箱が作動したわよ」  そう言ったのは、アンノウン・リジィ。  その言葉を深く聞くのは、白いスーツの古藤。  そして、口の端が裂けるような笑みを浮かべた。  その場にいる古藤以外の五つの影も、それに次いで邪悪な笑みをたたえた。  機は、熟した。  「計画開始か?」  グッグッ、と大男のドゥードが卑しい笑い声をあげた。  古藤はそれに頷き、口を開いた。  「はい、始めましょう。…………リジィ、ドゥード、タイニーは所定の場所へ行ってください」  「了解だよ」  子供の姿のタイニーが黒い箱を握りつぶし、姿を消す。  「暴れらんねえのは残念だが……グッグッ、死体にでも成功を祈ってるぜ」  次いでドゥードが、そして最後に、  「失敗したらあんたらぶっ殺すわよ」  リジィが姿をくらませた。  残ったのは古藤。無精ひげの男、真川。そして、黒いマントを纏った姿のみ。  「全てあなたのおかげです。死神という身分が全ての計画を可能にしました」  古藤は黒マントに向けて声をかける。黒マントはゆらゆらと揺れるだけだった。  では、と。古藤は喉を鳴らして腕を伸ばした。  「我ら偽国の人間部隊、行きましょうか」  古藤の手は黒マントの肩をつかみ、真川もそれに順じた。  「いざ、地獄へ」  その言葉を皮切りに。  悪魔達が歩を進めた。
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