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「ずっと家にいるんだからアンタがやっといてよ」
祥子はそこから目を逸らしながら言葉を吐き捨てるが、
「あ?」
「…………わかった」
折れてカップ麺をすする作業に戻った。
鉛のような時間がただただ過ぎる。
と、そこに電子音が亀裂を入れた。
ピンポーン、と。
「…………」
「…………」
二人は目を合わせる。そこに見られるのは警戒の色。
和暉が顎を使って玄関の方を示した。それに従って祥子は立ち上がり、できるだけ足を忍ばせ扉へと近寄った。覗き穴へ目を合わせる。
「警察か?」
背後から忍ばせた声がかかるが、祥子は首を振った。一旦、和暉の元に戻ると小さな声で、
「作業着が見えた。わかんない」
そう報告をした。
「無視すんぞ」
和暉はそう言い、祥子はそれに従い腰を下ろそうとすると、声。
「すみませーん。ガスが漏れてると通報があったんですがー。いらっしゃいましたら危険ですので点検させていただきたいんですがー」
扉の向こう側、玄関の外から聞こえる。
「出ないとまずいんじゃない?」
「ちっ」
しょうがない、という風に。和暉は頷くと、祥子は玄関へと向かう。ガチャリ、と扉を開けると。
「あ、どうも。すみませんが、中よろしいですか?」
そこには若い顔つきの男が立っていた。
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