強襲

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――――――――――――――――――――――――  視界の端で電流が弾けるのが見え、「それで監視システムは最後です。ありがとうございます」と男の声が耳に入った。  それを頭の隅で認識しながら乾いた声が空気に響くのを耳に感じた。  「――――――――ッ、かっ、はあ」  肉と血と、それらが湿った音を奏で。次いで、肺から喉へ、二酸化炭素を多く含んだ空気が押し出された。  (――――なんで――――)  地獄の受付嬢、サリ・シリンスは『なんで』と繰り返した。言葉は出なかった。ただ頭の中で繰り返すだけの簡単な疑問詞。  (なんで――――!!)  視界に鮮やかな赤色が飛沫となって舞い、まるでそれから目を離してはいけないかと脳が叫んでいるかのように瞼はその身を押し上げた。  目を通じて採取した情報を脳では処理しきれなかった。ただ、繰り返すだけ。  「なんで!!」  と。  ――――自分をかばって胴体を刺し貫かれた守衛に向かって。  サリは目の端から雫を舞わせながら、金切り声で喉を震わせた。  しかし時は待ってくれず、その身を常に動かす。  残りの四人の守衛がフロントから飛び出して行ったのが目に入った。同時にナイフを持った無精ひげの男とその他二人がバクステップを踏んだ。  「武器を捨てろ」、「手を挙げろ」、「動くな」と。久しぶりに聞く彼らの声が常套句を並べるが、サリの意識はもうそちらへ向いてはいなかった。  今はただ、自分にもたれかかるようにして息が絶えそうになっている男に意識が注がれている。
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