強襲

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 遠くの方で自分の声が泣き叫んでいるのが聞こえた。それに隠れてしゃがれた声も聞こえた。水気の多い物体が地面に倒れる音が幾つか重なって響いたのも、聞こえてしまった。  遠くの方で、聞こえた。  「遅れも出ていませんね。先へ急ぎましょう」  それに次いで「殺したい」の声と、「中でいくらでも殺せる」という声。渋々といった感じで足音が遠ざかっていくのを、すぐそこで感じた。  ――――また、私の目の前を悪が通り過ぎていく。…………止め…………、止めなければ!!  彼女は立ち上がり、そしてその手には通信具。  「こちら”門”、サリ・シリンス。緊急事態発生。三人の侵入者に守衛が殺されました。緊急自衛プロトコルの発令を求めます」  サリは震える声で自らの仕事を全うした。  足元には刺し貫かれた遺体。フロントテーブルの向こうには胴体が切断された四つの遺体。  そのさらに向こうに見えた三人の姿が足を止めた。しかしサリの目は足元に、そして四人に。  「……ランキー。デント、カンジ、ルード、トムソン」  ともに時間を過ごした同僚の名を、しがない受付嬢は口にした。  彼女は特殊な訓練など受けていなかった。死神道具など、もちろん使えない。彼女はただの受付嬢であった。  そんな彼女が睨み付けた。三人の魔導者を。溢れる涙を通して。震える歯を食いしばり。  今、彼女を動かしているのは――――  「みんな友達だった!!!」  ――――胸を締め付ける激情。そして――――  「中にいるのも私の友達なんだよ!!!」  ――――未だ心に残る払えない重い塊と、それでも前を見る彼女の信念。  「…………おとなしくしてれば私達はそのまま行ったというのに……」  白いスーツを着た男が呆れた声を出した。その目は悪。途方もない恐怖をサリへと与える。しかし、それでも。  サリという人間の核は潰れることは無かった。  「絶対に! 通さない!!!」
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