強襲

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 たった三分でいい。三分もすれば地獄内部に通じる全ての扉が『緊急自衛プロトコル』の発令によって使用不能になるはずだ。それだけで協会の安全は守られる。  たぎる心情の中、それとは分離したかのようにサリの頭は冷静に考えていた。  サリ自身は死神ではない。奴らを止める特別な力は無い。だったらどうすればいいのか。――――注意や関心を引きつければよい。  まずは大きな声で奴らの意識をこちらに向けることは成功した。  ガチガチと震える歯を噛みしめて、サリは魔導者の三人を見据える。距離は遠い。……やはり、口。  と、好都合なことに。切れ長の目つきの白スーツ男から口を開いてくれた。  「通さない、と言われてもですね……あなたに何ができると言うのでしょうか? 私達はただ扉に向かって歩いていけばいいだけでしょう?」  細い目から卑しい視線をちらつかせ、男はサリを小馬鹿にしたように見た。しかし彼女は気にしない。むしろ男の足が止まっているということに、震える身体がうれしさを感じていた。  「たしかにねぃ……」  怯える心を握り隠して、サリは必死に気丈に口の端を吊り上げて見せた。  「私にはあんたらを止めることはできないかもしれないけど、でもバカみたいに背を向ける能無しクズを一人くらいだったらブチ転がしてやれるわ」  声の震えすらも噛み潰して、サリは鬱憤の沈殿物を吐き出した。ピクリ、と白スーツの眉間にしわが寄った。  挑発に、かかった。  「…………言ってくれますね、クソ淑女が」  清々しいほど簡単にはまってくれた。完全に、足は止まった。  サリは確信していた。  ――――自分は今ここで死ぬ。  それだけの覚悟をもって、それによる恐怖を抑えつけているのだ。  共に働いた仲間の意志を貫きたい、――――守りたい。  扉の向こうのたくさんの友達を救いたい、――――守りたい!  サリはいや応なしに滲む涙を必死に無視して侮蔑の視線を突きつけていた。  何分経っただろうか。長く、感じるが実際はそんなことないのだろう。多分、一分経っていれば上出来。あと二分稼ぐことができればこの勝負は勝ちだ。仲間たちを守ることができる。
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