強襲

10/25
前へ
/199ページ
次へ
 残された二人は数瞬間を置き。古藤は「では」と一呼吸。  「私も仕事をしましょうか」  一言そう言うと、首をこきりと鳴らす。  黒フードが少し距離を取ったのを確認すると、動いた。体の前で上向きにして出した掌にはいくつもの小さな瓶。中には赤黒い液体がゴポリと泡を立てている。  「魔導陣・穢土醸造」  呟くと同時に手元の瓶を足元へと叩きつけた。地面に当たると同時にそれらは簡単に割れ、その中身が流出。次の瞬間にはまるで意思を持っているかのように地を走り一つの形を作っていた。    複雑な模様が組み合わさり、出来上がった陣。瞬間の時を置いて、その陣が光を発した。暗い、光を。  「さあ、来てください。私の醜いペット達よ!!」  古藤が叫ぶと陣から手。獣のような手。それは地面を掴むと、一気にその姿を這い出させた。  獅子のような、蛙のような、血走った眼球を持ったグロテスクな生物がその身を震わせる。  それを皮切りに次いで次いで次々と、多種多様な生物がその身を地獄の空気に躍らせた。  ――――魔導生物。古藤という魔導者が飼いならした禁忌の生物達。死神が魂を連行する魔力プログラムを真似て、魔導を溶かした自分の血液を媒介にして何十匹という化け物を地獄に呼び寄せたのである。  「たった三人なわけが無いでしょう!? そりゃ呼びますよ、兵隊!! ほらそこですよ!」  彼が不意に指さした方向に二匹の魔導生物が飛び掛かる。建物の一部を破壊すると共に、身を隠した死神の血が流れた。  古藤は一人、高笑いを響かせる。その少し離れた隣で、黒いフードがピクリと揺れた。ポンポン、と古藤の肩を叩く。  「ん、もう来ましたか。……行ってください。キルコ・コフィンズはあなたに任せますよ」  その言葉の直後。ぴりぴり、と空気が痺れを感じたような味になった。それぞれ動く魔導生物達がほんの少し、すくむように黒いフード姿から離れた。  一歩、また一歩と。電気を帯びた殺意が歩き出した。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加