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突然流れたアナウンスに、壮介は若干のわくわく感を覚えたが。同じテーブルに座っていた二人の表情が一瞬にして険しくなったのを見て、また焦りを含んだ声のアナウンス内容を耳で捕らえて、壮介は暗雲が立ち込め始めたのを感じていた。
時間にして30秒ほどの放送内容。二回繰り返されたその声は、あからさまな"危険"を訴えかけていた。
「……………………」
「……………………」
屋外から聞こえていたその音が消えて数秒、ユジローと美束はピクリとも動かず、壮介は壮介で突然の出来事に動けないでいた。
「…………え、っと、あの」
あまりにもわけが分からなかったので、壮介は静寂を破って問いかけようとしたところ。
「壮介くん、避難しますよ」
美束の声が遮った。今まで話していたものとは違い、若干の緊張を含んだ声だった。
それでも未だに事態に追いつけていない壮介は頭に疑問符を浮かべたままで、それに対してユジローが早口で説明をする。
「さっきのアナウンスは多分、緊急自衛プロトコルの一部だ。簡単に言うと敵が攻めてきたんだ」
ユジローの鋭い目つきに一筋の汗が流れつく。焦りの表れのように見えた。
「"門"とここを繋ぐ扉は封鎖された筈だけど、それでも危険だから避難しなければ!」
彼の声は壮介を急かし、
「は、はい!」
それを聞いた壮介は首筋にぞくぞくと不安を感じていた。
ユジロー、美束は慌てる様子で作業室を飛び出し、壮介はそれに倣う。
敵、緊急自衛、避難。
壮介が思い出したのは、何人もの詐欺師に囲まれた時のこと、鉈を振りまわす元友人に殺されかけた時のことであった。
即ち、危険。これは命にかかわる危険なのであると、ようやく理解した。
そして、そんな中で気になっていたのは。――――キルコ、彼女のことであった。捕獲作戦に出た彼女は今何をしているのか。
そんなことを考えながら、軽い鐘の音と共に出入り口が開き外に飛び出――――
「――――――な!?」
――――そうとした彼らの目に入ったのは。
「魔導生物…………」
口から血を滴らせながら闊歩する、カマキリのようなトカゲのような生物であった。
それを前に、美束が弱弱しく言った。
「もう、侵入されてる……」
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