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「夢が決められない」
昴はそう言ってため息をついた。放課後、学校の門を出て、坂道を下っていた時のことだった。
六月。雨の季節で、ジメジメとした空気。雨はまだ降っていないけれど、曇った空は今にも泣き出しそうに見えた。
もしかして悩んでいるのかもしれない。晴は昴の目をじっと覗き込んだ。
昴は気持ちが落ち込んでいる時、下の瞼が痙攣していることが多い。無理をして朗らかに笑っている時でも、下の瞼だけはピクピクと動いていたりする。
それを知っているのは晴だけだった。
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