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ある夜勤明け、勤務先である軍病院から帰ると、電気も点けずカーテンも閉め切った部屋の中で夫がソファーに腰かけて泣いていた。
どうしたのか、と私が声をかけると夫はパンパンにはれ上がって痛々しい目で私を見て、とにかく一緒に病院に来て欲しい、と私の手を引いて車に乗せた。
数十分走って、車は夫が勤める大学病院に着いた。夫も医師なのだ。
夫に伴われて入った診断室の中では、夫の上司であり私もかつてその下で学んだK教授が私たちを待っていた。
沈痛な面持ちで私たちには目もくれずカルテに目を落としている教授に私が、あの、夫に何かあったのでしょうか、と声を掛けるとK教授は一層悲しげな眼差しで私たちを見つめるのだった。
まったく訳が分からない。
尚も私が問い詰める素振りを見せると、K教授は重い口をやっと開いた。
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