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「大丈夫?そろそろ病院に行かなくちゃ」
…そう。今日はK教授の診察を受ける日なのだ。予約はあと1時間後。もう家を出なければ間に合わない。
私は一度ぎゅっと強く目をつぶってから、どこかにいるはずの夫に行きましょう、と声を掛けて出かける支度をし、家の前にタクシーを呼んだ。
しばらくすると、1年ぶりの大学病院が見えてきた。私の頭の中を走馬灯のようにこの一年が駆け巡る。
宣告を受けた日は、1年後がこんなに怖いものだなんて知らなかった。記憶が私の感情をあまりにも強く揺さぶるので、私は思わず目を閉じた。
院内は平日だからか閑散としていた。
会釈してくれた通りすがりのご婦人は患者さんだろうか、点滴棒を転がしている。
彼女の目には私が一人で病院に来ているように見えるのだな、と思うとなんだかおかしかった。
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