透明人間になるまでに

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 診察室に入ると、K教授は私たちを笑顔で出迎えた。なんと、教授も今日という日が迎えられるとは思っていなかったらしい。そこで初めて私は、リミットが「少なくとも1年」ではなく「長くても1年」だったことを知った。  しばらくこの1年の経過や取り組みなどを話した後、教授は「旦那さんにだけ話を話を聞きたいから、別室で待っていてほしい」と言い出した。  おかしなことを言うものだ、夫は今透明なのに、私は思ったのだが、教授には私の知らない意思伝達方法があるのかもしれないと考え直しつつ看護師さんに案内されて別室へ向かった。  診察室の戸が閉まる瞬間、私を見ていたK教授の目が悲しそうに歪んだことがやけにはっきりと私の目に焼き付いた…。 ………………
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