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教授はあらゆる手を尽くして同じような症例を当たってくれたが、そのどれもが悲劇的な結末だった。
それから教授は、この認知障害の特徴として、まず1番近しい人間から認知ができなくなっていくことがあると言った。
それはおそらく僕だろうと思った。妻に兄弟姉妹はいないし、両親は彼女が大学生のころにそれぞれ病気と交通事故で亡くなっていた。
そして僕は、妻に嘘をつくことにした。
幸い彼女は事故のことを何も覚えていない。僕は彼女を絶望させたくなかった。とりあえず僕が透明になることにして、これから1年をかけてゆっくり解決策を探っていけばいい。そう、考えたのだ。
どこかの時点では、彼女に真実を告げなければならないだろう。
でもその時が来るまで、仮初めでもなんでも、妻には何も知らないでいてほしかった。
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