透明人間になるまでに

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 おかげでこの1年間は、僕の人生の中で最も穏やかで最も幸せな日々だった。妻にとってもそうであったことを祈っている。  後悔はしていないが、涙が止まらない。  なぜなら今日から彼女は、僕の手の決して届かない場所に行ってしまうからだ。  これから妻にとって、周りの人間はどんどん透明になっていく。1年を超えてまだ認知ができていること自体が奇跡なのだ。  今後透明化のスピードはますます速まり、妻に何が起こるか、彼女がどうなるのかなんて誰にも分からない。だから隔離される。  K教授が僕の肩を優しく抱いて慰める。  違う、僕は慰められるようなことは何もできていない。ただ妻にとって残酷な真実の宣告を今日まで先延ばしにしただけだ。      
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