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しかしその穏やかな日々を、病魔はゆっくりと、だが着実に蝕んでいった。
初夏の日差し爽やかな、ある日曜日の朝のことだ。
食器を洗っていた私は、リビングからいつの間にか夫の姿が消えていることに気付いた。
あれ、さっきまでいたのにな、と思ったが、きっとどこかジョギングにでも出かけたのだろう、と考え直してそのときは大して気にも留めなかった。
夫がふらっとジョギングに行くのは結婚前、まだ同棲していたころからの彼の癖のようなものなのだ。
きっとあと1時間もしないうちに帰ってくるだろうと私は高を括って買い物に出かけた。
…しかし、夫はなかなか帰ってこない。
正午を回り、近所の小学生たちの元気な「ただいま」が聞こえ始めても、夫はまだ帰ってこなかった。
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