8人が本棚に入れています
本棚に追加
私は不安になって、夫に電話をした。
その着信音は家の中、それもすぐ近くで聞こえた。
そして私はそこで初めて、リビングのソファーに腰かけ電話を握りしめて泣いている夫を見つけたのだ。彼はずっとそこにいたのだ。ただ…私に見えなかっただけで。
こんなことが、だんだん増えていった。
長いときは丸3日も夫は透明なままだった。
そのうち、ルールができた。
夫の姿を見かけないと思ったら、すぐに電話を掛けること。透明になっていると気づいたらすぐに連絡ノートに書くこと。透明な間は、家から出ないこと。
慣れとは恐ろしいもので、半年も経つころには、私は夫が透明になってもあまり動揺しなくなっていた。もちろん悲しい気持ちにはなるが、どうしようもないことだし、それに一番つらいのは夫なのだ。
透明な間、彼は誰にも認知してもらえない。
その絶望は、私には到底計り知れないものだった。
最初のコメントを投稿しよう!