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――そして、とうとう俺は自分が分からなくなった。
元に戻ろうと、自分の姿を想像するが、頭には誰の姿も浮かばない。
写真を見ても、自分がどこに写っているのか認識できない。
自分の学生証に貼られた写真が、誰なのか分からない。
この透明になる能力は、自分の姿を想像することで、元の姿に戻ることができていた。
俺は長い時間を透明な姿で過ごし、“透明な自分”を見ていた。
その時間は、しだいに俺のなかで“透明な自分”を本来の自分の姿として認識させていった。
俺は、自分の姿が見えなくなってしまった。
だけど、なにも感じない。
だって、俺の姿は“これ”だから……。
誰にも見られない、
自分でも見えない。
これが、本当の自分の姿だから――
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