『透』

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――だが、せっかく手に入れた能力を、使わない手はない。 俺は色々と透明な姿で出来ることを探し、試した。 そして、色々なことが分かった。 まず、透明になれるのは自分の身体だけ。 もちろん、それ以外は身に付けていようと、透明になることはない。 自分の発する声や音、ニオイも消えない。 だけど、血液や排泄物など、自分の体内で作られたり、何かしらの変化が与えられた物質は、肉体と同様に透明になる。 どうやら、身体の表面が光の屈折や反射などで見えない状態になっているわけではなく、細胞一つ一つが透明になっているようだ。 まあ、こうやって、何ができるか分かったわけだ。 俺は、この能力を使い、様々なイタズラを決行した。 だが、イタズラと言っても、カワイイもんだ。 人がたくさんいる所でポルターガイストごっこをしたり、女の子の部屋に入って生活を観察したり……。本当に、ちょっとしたイタズラだ。 強姦や強盗みたいな犯罪は、透明になっても、する勇気がなかった。 俺の小心者な性格は、透明になっても消えることはなかった。
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