『透』

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と、いってもイタズラを止めることはなかった。 このイタズラは小心者な俺を、少しだけ強気にさせる、いいストレス発散になっていたからだ。 そんな、ある日。 数少ない友人の一人が、怪訝そうに俺の顔を見ながら呟いた。 「なあ、お前……顔つき変わった?」 「は? どういうこと?」 「いやさ、最近、お前の顔が前と違う感じがする気がして。なんていうか、お前なんだけど、お前じゃない感じ」 友人の言いたいことが分からず、眉間にシワをよせ、首を捻る。 「それって、俺が明るくなったか暗くなったってこと?」 友人は俺の顔を覗き込み唸る。 「うーん。なんか違うんだよな~。妙な違和感っていうか、なんていうか……」 「……違和感……?」 友人はそれ以上なにも言ってこなかったが、彼の言う違和感という言葉に、思い当たることがないわけではなかった。
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