『透』

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俺は、数日前から鏡に写る自分の姿に違和感を覚えていた。 そこに写る姿は、たしかに自分の姿なのだが、ふいに他人の姿を見ているような感覚に落ちるときがあった。 写真などで確認し、いっときは納得するが、すぐに自分の姿に違和感を覚えてしまう。 この現象が起こり始めたのは、透明になる能力を手に入れてからだ。 そして、この感覚は日に日に強くなっているようだった。 違和感に比例して、俺が透明になっている時間は、日に日に長くなっている。 このままでは危険だという感覚はあった。 もう、止めようという気持ちが湧くこともあった。 ……けど、俺は透明になることを止めなかった。
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