第1章

4/40
前へ
/40ページ
次へ
 おまけに、海軍の戦闘(ふ)艦(な)乗りたちは、基地の練習機の機体の色がオレンジ色だったこともあって、水上機がワイヤーで吊られた恰好で上げ下げされる様子が、まるでトンボが糸で操られているようだとして、当時まだ発展途上にあったこれらの航空機のことを??赤トンボ?′トばわりしていた。これを航空隊の者たちは心底苦々しく思っていたのだ。    因みに、それから凡そ十五年後の昭和三年頃から、戦艦や巡洋艦などの大型艦艇用に開発された火薬発射型旋回式カタパルトの一連の作業の流れはというと――。  まず、水上機がデリックで艦艇の格納所から吊り上げられて、カタパルトのレールの上に乗せられる。そして、その機の操縦士が操縦席に乗り込んで、整備兵に、―準備よし―の合図を送ると、その兵がエンジンを手動で始動させる。それから暫くして、エンジンの暖気運転が完了すると、カタパルトに射出用火薬がセットされて、パイロットに準備よしの合図が送られる。それで、火薬に点火が行われると、ドカーンという轟音と共に水上機が勢いよく射出機から発射される。そして、着水した後はそれまでと同様の手順で格納所に収める。と、このような具合であったのだという。  この、航空機を射出するためのカタパルトに関して言えば、のちに登場するようになる航空母艦に設置することも検討されたというが、巨大な設備一式を飛行甲板上に設置する訳にはいかず、さりとて飛行甲板の下に収めるという訳にもいかなかった。その上、火薬式をそのまま採用した場合、機体の大きさや重さに合わせて射出力のパワーを増やそうとして、あまり火薬の量を増やし過ぎたりすると、操縦士の首の骨が折れるほどの衝撃が機体に発生して危険が増すことなどから、射出力にかなりの制限があったりした。その為、その設備の設置は見送られたようだ。 
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加