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幻覚
2013年9月、沙耶香は就活に失敗して故郷である神奈川県夕凪市に戻ってきた。大ヒットしたあまちゃんがクライマックスを迎えた頃、沙耶香はハローワーク通いに勤しんでいた。昨日も【ご健闘お祈り申し上げます】と、パソコン教室から不採用通知が届いた。「燃やしてやろうかな」と冗談を言うと、「そんな態度だから落ちるのよ」と、母親からどやされた。
夕凪駅からシャトルバスに乗る。憂鬱な灰色の空を眺め、「死にたい」と呟いた。
後ろの席に乗っている少女が何やら話している。
「エリカ、知ってる?涼子ちゃんが殺されたの」「涼子ちゃんって鑑別所で会ったあの子だよね?同級生を殺して、生首を押し入れに閉まっていたっていう。マジで?死んじゃったんだ?」
「京都にある六角堂っていう、昔の死刑場のあったお寺に涼子ちゃんの生首が落ちていたんだって」
「やだぁ、同級生と同じ殺され方じゃん」
「ねぇ、知ってる?クビリオニって?中国に伝わる怪物でね?地獄に堕ちた人が現世に戻るには、自分と同じ方法で下界の人間を殺さないといけないんだって。江戸時代になって、日本にも伝わったらしい」
「涼子ちゃん、クビリオニに殺されたんじゃないの?」
「まさかぁ。ねぇ?涼子ちゃんが殺した同級生、何ていう子なの?」
「確か、沙耶香とか言ったっけな」
沙耶香は後ろを振り返った。ポニーテールの少女が一人で喋っていた。少女がニッコリ微笑んだ。
「やぁ、沙耶香ちゃん」
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