第二話

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 何かが起こってる。何かが。原因は分からない。  今、私は悪夢を辿っている。この後、地震が起きるはずだ。落ちてきた懐中時計を手にした瞬間、怪異に襲われて私は死ぬはずだ。  一歩、保管室の中へと足を踏み入れた。後ろからは、私がピリピリしているのを感じ取ったのか、樹希(たつき)が心配そうな声をあげていた。  そして、私は再び立っていた。自室の畳の上で、固く手を握りしめて。また怪異に食べられたのだ。 「今日は、何日なの」  急いで障子をあけ、廊下をのんびり歩いてくる樹希(たつき)に飛びつく。 「報告書を見せて」 「え? あ、はい……」  また、2月4日が始まった。これは、夢ではない。確実に何かが起こってる。精巧な幻影か、時間が巻き戻ってるのだろう。  精巧な幻影であれば、不意を衝けば壊れるはず。壊れなくても、綻びがどこかにできる。  私は迷わず拳を作り、振り上げた。今、目の前にいる樹希(たつき)の横面に。彼は派手に廊下に転がった。 「何で殴るんだよ!?」 「幻影かどうか確かめたかったの」 「そういう時は、グーじゃなくてパーで殴れよ」 「分かったわ。次はチョキにしておく」  手が痛い。世界は壊れた様子もなく、どこかがほころんでいるようにも見えない。幻影じゃない。  とすれば、残る答えは1つ。  私は、2月4日を繰り返している。早く原因を突き止めなければ、私は永遠にここから抜け出せない。 「あー……痛ってぇ」 「証拠保管室へ行くわよ。早く!」  あの時計が原因になっているはず。時間が巻き戻ったとき、確かに手にしていた。2度とも。でも、時計は今、私の手元にない。それなら、一体どこにあるのか。  廊下を駆け抜け、管理用のパソコンに飛びついた。時計に関する情報を探すが、記録は古いものばかり。画像を見てみても、私が手に取ったあの古い懐中時計はなかった。 「なんでないの?」 「何捜してるんだよ……」 「時計よ。古い懐中時計。確かに保管室にあったのに、記録がないの」  憑りついているはずの怪異は、誰かに退治されているはずなのに。どうして、証拠であるはずの時計が保管されていないのか。パソコンの画面を見ながら、悩んでみても答えは出なかった。  あの時計が再び力を持った理由も分からなかった。
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