第1章

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1隻の潜水艦が海中から発射する、弾道ミサイル発射実験の準備を整えていた。 この潜水艦を所有する国は、現在隣国と一発即発の状況であり、この実験は牽制の意味も持っている。 発射実験は過去に2~3回行われており、今回の実験は、より飛距離を伸ばした新型弾道ミサイルの発射実験であった。 海上の艦艇に乗船している、実験の最高責任者に報告がなされる。 「準備が全て整いました」 報告を受けた最高責任者はマイクを手に持ち、潜水艦に向けて発射命令を下す。 「実験開始! 」 潜水艦の艦長は発射命令を、2ツの発射ボタンの前に立つ2人の兵士に伝える。 「発射! 」 2ツのボタンが同時に押された正にその時だった。 潜水艦の真下の海底を中心に、半径数キロの海底が海底地震により突然隆起。 隆起した海底に押し上げられた海水が潜水艦を直撃。 潜水艦は押し上げられ海上にその姿を晒し、転覆するのではと思わせるほどの横倒しの状態になる。 ミサイル格納庫から弾道ミサイルが飛び出したのは、横倒しの状態になったその時だった。 本来なら大空目指して駆け上がって行く弾道ミサイルが、海面スレスレの所を隣国の方向を目指し飛び去って行く。 実験の最高責任者は即座に実験の失敗を悟り、ミサイルの爆破指令を命じる。 「ミサイルを爆破しろ! 」 しかし、その命令を実行出来る者はいなかった。 潜水艦や最高責任者が乗船している艦艇の乗員は、固定された物にしがみつく事が出来た幸運な者達以外、左右に大きく揺れる動きの中あっちこっちに投げ出されている。
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