スリルを求めて

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夕暮れの教室内で、それぞれの話に花を咲かせていた男子と女子だったが、ガラリと空いたドアにその注意が向けられた。 「君達、下校時刻はとっくに過ぎてるぞ」 「きゃあ、霧崎先生!」 愛理が嬉しそうに悲鳴をあげた。 「暗くなる前に早く帰りなさい」 「え~」 「・・・まさか、居残り勉強をしたいとでも?」 「は、はいっ!あたし理科が苦手で、教えてもらえたらなぁって」 「ふむ・・・君はどうやら勉強熱心な生徒のようだな。いいだろう、明日、野上先生に伝えておこう」 「えぇっ、野上ぃ~!?」 その光景を見ていた翔太が、お腹を抱えて笑い出した。 「愛理、まぬけ~」 「う、うるさいわね!」 「あっ、そうだ、霧崎先生は幽霊と殺人鬼、どっちが怖いと思いますか?」 和人の問いかけに、霧崎が不思議そうな顔をした。 「幽霊と殺人鬼?」 「はい。ちょうど今、男子達だけで話してたんですけど、2対2なんですよ。先生はどっちかなって思って」 「・・・あいにくと、私はどちらにも遭遇したことがないのでね。どちら、とは言い難いな。何故そんなことを?」 「いやぁ、毎日つまんないなって話してたら、なんかそんな話になっちゃって。スリルがあればなと」 「スリル・・・」 「はい。幽霊か殺人鬼にでも逢えたら、面白いんじゃないかと」 「・・・・・実は私の別荘で、女のすすり泣きが聞こえると言う噂がある」 「えっ!?先生の別荘で?そ、それって幽霊ってことですか?」 「さぁ・・・。先程も言ったが、私は幽霊にも殺人鬼にも出くわしたことがないのでね。ただ、うちの別荘に泊まりに来る客がみんな、深夜に聞こえる・・・と。あいにく私が不在の時に、そういうことが起こるらしくてね」 「す、すげー!やっぱ幽霊はいるんだよ。どうだ彼方」 「いるわけない。ただ声が聞こえるってだけだろ。信憑性に欠ける」 「なんだよ、頑固な奴だな。でも、すすり泣きかぁ。心霊研究会の部長としては、ぜひ聞いてみたいよなぁ」 「・・・・・来るかね?」 「え?」 「私の別荘に。スリルを求めているんだろう?」 「いいんですか!?行きます!」 和人に続いて翔太と愛理も手を上げた。 「俺も行きます!」 「あ、あたしも行くっ!」
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