スリルを求めて

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「彼方、どうする?」 「いい機会だ。幽霊なんていないと証明してやる」 「お前が行くなら、俺も行こうかな」 「ゆ、遊馬が行くなら私も行く!」 最後に残った詩織に、みんなの視線が集まった。 「か、彼方君も行くの?私、私は・・・」 おろおろとしだした詩織に、霧崎が静かに口を開いた。 「怖いなら、やめておきなさい。後で後悔するのは君自身だぞ」 詩織が彼方のほうをチラリと見て、意を決したように口を開いた。 「い、行きます」 「みんなも後悔しないかね?」 全員がうなずく。 「フッ、よろしい。最高のスリルを、味わわせてあげよう・・・」 妖しく笑った霧崎の美貌に、一瞬そこにいた誰もが目を奪われた。男子はポカ~ンと口を半開きにし、女子はコクリと息を飲み込む。 「さぁ、もう帰りなさい。あと10分したら校門を閉めるぞ」 全員で校門を出た後、翔太がポツリとつぶやいた。 「あ~、俺マジでやばかったわ。危ない世界に引き込まれそうになった」 「ええっ!?マジかよ~。お前ってそのけあるの?いやんっ、俺、襲われちゃうっ」 和人がクネクネッと体を揺らし、ぎゃははーっと笑い合ったふたりを、舞が呆れた顔で見つめた。 「ほんっと、あいつらって馬鹿だよねー」 「・・・・・」 「愛理?どうかしたの?」 「舞、あたし、あたし本気で霧崎先生のことを、好きになっちゃったみたい。今までみたいに軽い気持ちじゃないんだ。・・・決めた!あたし絶対、霧崎先生を振り向かせて見せる!」 「遊馬、霧崎先生は、ここに赴任してくる前は、医者をやっていたそうだ」 「へぇ、でも医者なら、理科じゃなくて保健医でもよさそうなのにな」 「おそらく外科医だったんじゃないか?それにしても、医者を辞めて、たかだか高校のいち教師になるなんて、もったいない気もするけどな」 「そうだな。でも、大人には大人の事情ってやつがあるんじゃないか?」 「確かに。・・・なんだか雲行きが怪しくなってきたな。さっきまであんなにいい天気だったのに。不気味な色だ」 彼方が、変化し始めた不気味な空を、奇妙な顔で眺めた・・・。
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