Act.10

17/28
432人が本棚に入れています
本棚に追加
/290ページ
「俺にはあいつらみたいなファンはいないから」 森くんはそう言うけれど、そんなことないと思う。 それでも、隣でニコニコ笑ってくれる森くんを見ていたら、不思議と力が抜けていった。 さっきまで居心地悪いと思ってたくせに、穏やかな空気が彼の周りを纏い、それがなんだか心地良い。 そんな空気を打ち破るように、森くんのところへ秋山くんが近寄ってきて。 途端、張り詰めたものへと変化したのがわかった。 今、目の前にいる秋山くんの表情には笑みはなく。 少し強張ったようにも見える秋山くんの横顔に、その緊張があたしにも伝わってくる。 「行くぞ」 森くんに声をかけると、森くんの表情も一瞬にして引き締まったものへと変わった。 「頑張ってね」 二人を見上げ、頑張ってとエールを送る。 あたしにはそれしか出来ないけど、この二人がいるうちのクラスは大丈夫だって思える。 あたしの声に反応するように、秋山くんの表情が少し緩んで小さくコクンと頷いてくれた。
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!