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みんなが手にしているその教科書なんだけど。
俺の授業では使わないんで」
安藤先生の発言に生徒達はきょとーんとした顔をし、教室の空気が
しーんと静まりかえる。
「俺の授業では教科書は使わない」
安藤は繰り返し言った。
「先生授業放棄ですか」
ある生徒が手を挙げて発言する。
「いや。俺は常に真面目だ」
安藤はどや顔で言い放った。
「確かに授業において教科書は基礎を形成する入門書だ。
けれども国語という教科においてはどれだけ必要なものだろうか。
君たちにとって直近でのターニングポイントは大学入試だろう。
そこで教科書に載っている内容が出題される確率はどれだけあるのか。
たまたま教科書で勉強した
文学作品や論文と同じ内容が出題されたとして、
出題者が変わることで問題の切り口が変わってしまうだろう。
果たして通り一編にしか学んでこなかった君達は乗り越えられるだろう
か。入試はもとよりいずれ社会人となる君達にとってどれだけそういった
国語力が仕事に生きていくのだろうか。」
安藤の語り口調に生徒達は真剣な眼差しを向けている。
「だから俺の授業ではそんな固定概念はいらない。授業に必要なのは
俺と君たち
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